優秀賞植物で染める、慈しむ

優秀賞 植物で染める、慈しむ

「ヘナのある風景」エッセイコンテストの優秀賞に選ばれたのは3作品。
まず1作目は、京都夕日様の「植物で染める、慈しむ」のご紹介です。
小さな頃から、ご自分の容姿に自信が持てなかった作者。植物染めに始まり、ボディペイントに目覚めて自信をつけていく様子が爽やかに描かれています。

京都夕日様「植物で染める、慈しむ」

おしろいばな

 

私は小学生のころ、「お化粧」しながら帰るのが好きだった。

帰り道にはオシロイバナがたくさん咲いている小道があった。

私はまず黒い種をとる。なるべ く大きく中身がつまっていそうなものを選んで。

その固い殻を割って白い粉を手に広げる。子 供独特の赤い肌が白く染まるのをうっとりと見つめてから、その粉を控えめに頬へ。ふわりと独特の香りを感じながら粉のすべすべとした質感を楽しみ、次は花を一輪摘み取る。

 

今日は 赤色の濃い花にしてみよう。雄しべと雌しべを引き抜いて、花びらをキュッと指で押し潰す。そしてそれを反対の手の指にそっと押し当てると、爪が花色に染まっている。

その頃にはオシロ イバナの種と花の香りに包まれて、とってもとってもキレイになっているのだ。

低いカーブミラ ーに自分を写して、気分の良いときは花をもう一輪摘み取って頭に差したりしてみる。まるで 憧れのモデルさんになった気分で、私はその時自分が大好きになれるのだ。それは小さい頃 からなぜか白髪が多かったり、肌が弱かったりして自分の容姿に自信のない私が、唯一自分 を好きになれる秘密の時間だった。

 

あれから 10 年ほどの時が過ぎ、小さい頃から自分に自信が持てなかった私が一人で絵を描くことに夢中になったのは必然ではないだろうか。

芸術系大学に進学したものの、油絵も水彩画も、私より上手い人がたくさんいることにももう気づいてしまっている。

 

絵を描くのが好きな自分

 

何かみんなと違う、ときめく何かはないものか。そんなことを考えている時に、私は校内の掲示に目が留まった。

ボディーペイントの会社のお手伝い募集。なにかピンと来たすぐに応募をして、ボディーペイント の会社のお手伝いを始めた。

ボディーペイントとは、その名の通り、顔や体に直接絵を描いた りするものだ。イベント会場やスポーツ観戦の場に赴いて、お客さんの顔や腕に国旗や模様を描いたり。

はてまて大手の CM や雑誌に使われる広告に使われる、全身にペイントを施した前衛的なアートを制作したり。

体に害のない特殊な絵の具の他にも、「ヘナ」と呼ばれる植 物の染料で、肌に美しい模様を描くこともある。こちらは水で落ちたりせず、時間をかけてゆっ くりと肌から色が抜けていき、落ちないアクセサリーとして嗜む人も多くいる代物だ。

 

私は人の体をペイントで直接美しく見せたりする、油絵でも水彩画でもないそのアートにのめり込んでいった。夢中になるほどペイントの腕は上達して、お手伝いも忙しくなり、大学との両立は大変だった。

大学の卒業論文もボディーペイントを題材にすると決めた私は、昼は現場でペイント、夜は論文制作とまさに寝る間も惜しんだ。疲れを感じても、たくさんの人がボディーペイントによって 笑顔になっていく、それを見ていると頑張れた。

 

ボディペイント

 

やっとのことで卒業論文を書き終え、就職のためにボディーペイントの会社のお手伝いも一旦 区切りをつけることにした。最後のイベントのお手伝いを終え帰宅し、ふと鏡の自分と目が合 う。そこに写った私は、色んな色の染料のくっついた汚いトレーナーがやけに似合っていて、邪魔にならないように無頓着にくくっていた長い髪には白い毛が増えていた。思わずふと笑ってしまう。

不思議とそれで以前のように自信がなくなったりしなかったからだ。やりきった、すがすがしい気分だ。ボディーペイントという素敵なものに夢中になって、それで色んな女性を笑 顔にできた。まるで燃え尽きたかというように、髪も白くなったんじゃないかとすら、思う。

 

 ボディーペイントで笑顔になっていった人を思い出したら、頑張った私を、今度は私自信をきれいにしてあげたいという気持ちが込み上げてきた。 その思い出したのが、あの「ヘナ」だった。

肌を染め、その人をより美しく見せたり、日常をより楽しい気持ちにさせるヘナ。そういえば髪 を染めることもできたはずだ。 私はネットでヘナの染料を調べて購入し、早速家で開封してみる。

説明書を読みながら染料を取り出し、準備して、ドキドキしながら髪にそれを塗布する。不思議なそのヘナの独特な香りを感じたとたん、なぜか鼻を突き抜けて全身が懐かしさに包まれた。

そうだ、これは小学生のころ、シロツメクサの割れた種や潰した花びらを爪や肌に当てがっていた、あの香りと感覚だ。 自分の髪に丁寧に触れながら、同時に、自分に自信が沸き上がっていく、あのワクワクした 気持ちも思い出していた。

 

子供の手

 

思えば、あの小学生の時から、やっていることは対して変わらなかったんだな。そう思うと、またふふと笑ってしまった。 ずいぶん長い間忘れていたけれど、私は自分のことを好きになりたかったんだ。自分だって、綺麗になりたかったんだ。その喜びを、私は知っているはずだ。

染め終わり、その元の色を生かしながら奥行きのある髪色に染まった髪を鏡で確かめる私 は、不思議と口角は少し上がり、目はしっかりと潤いイキイキとして見える。私は美人じゃない けれど、とてもキレイだ。そう思えた。 日がたち色が変化していくのを、まるで自分の心境の変化のように感じて愛おしかった。私は色々な染料で少しずつ髪を染めていく、その時間は今でも癒しだ。

生活の中でヘナで自分を染める、それは今度は燃えて色を失った私に再び色染み込ませるような、コンプレックスを包み隠すように上から色を被せるのではなく、自分のありのままの姿に自然な色味を染み込ませ満たしていくような そんな尊い、尊い習慣だ。

私はきっと、これから辛いことがあっても、自信を失わずにやっていける。 私はボディーペイントやヘナで、自分を好きになれた。私はもう、白髪の多い自信のない女の子じゃない。道端の植物で自分を染めて、一人で自分を癒していた私は、人のことだって自分のことだって幸せにできる女性になれたのだから。

 

※写真はイメージです。

 

エッセイの選評

(グリーンノートからのコメント)
女性なら誰もが経験する容姿へのコンプレックスですが、好きなことを通じて克服できたご経験は、とても印象に残り共感を覚えます。そして自分自身を笑顔にするために「ヘナ」染めにいきつくエピソードも、私たちの心に響きました。大賞に次いで、とても評価が高かった作品です。

 

(受賞者のコメント)
美容院に行きづらくなったり、家にいる時間が増えて自分を見つめる時間も増えた今、ヘナの魅力を広める機会でもあるのではないでしょうか。
そんな中だからこそ、ヘナの存在を知らない人にもヘナの特徴を素敵なものに思っていいただきたく執筆いたしました。
ヘナの、ドラックストアで売っているカラーリング剤に比べたら便利には染まらないことや、もしかしたら苦手な人がいるかもしれない独特の匂いが、むしろ唯一無二の魅力だと思えたり・・・

エッセイには書ききれませんでしたが、ヘナや染料を研究してきた私はヘナを日本に伝え浸透させるにあたりあっただろう、中澤さま始めとし貴社の皆様のご苦労ご苦難を想像してしまいます。
以前よりHPなども定期的に拝見しており、ヘナの特徴を丁寧に伝えお客様の声に真摯に向き合われる姿勢には、尊敬の念を抱かずにはいられません。
文章を通してそんな貴社やヘナを利用する人の些細な一助となれましたら幸いです。

グリーンノートヘナ


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